trussユーザー事例紹介(株式会社安藤・間様 vol.2) henmi

trussの建材管理と組織での活用

株式会社安藤・間では本社移転とテレワークの拡大に伴って、設計業務の効率化を組織的に進めています。

今回はご自身も設計者としてキャリアを積まれ、現在は設計組織を運営する立場の杉山様、鈴木様、田村様3名に、組織としての建材に関する課題や教育、積算や調達を含めたtruss活用の展望や期待についてお話をお伺いしました。


建築設計統括部長

杉山  文彦 氏(写真中央)

構造設計や営業職などを経て、現在は設計各部門を統括し、DXなどの技術で受注支援、現場支援を促進し、建築事業の総合技術力向上を図る部門を統括している。

建築設計統括部設計企画部長

鈴木  幹夫 氏(写真左)

意匠設計を経て現在は全国の設計部門の統括と一級建築士事務所の運営管理を行う設計企画部長として、業務改革や組織編成を行っている。

建築設計統括部設計企画部 品質管理グループ長

田村  丈二 氏(写真右) 

意匠設計として設計担当者・責任者・グループ長など様々な立場で、マンションやオフィス、物流施設など多くの物件に携わる。現在は設計企画部の品質管理方面を管轄している。


組織の役割とtrussとの関わりについて

建築設計統括部 杉山 建築設計統括部の役割はDXやXRといった技術の設計者への普及活動と、技術による施工現場の支援です。建材については、設計・積算・調達・工事の中での最新情報の共有や、デジタル技術を使った提案による施主合意の前倒しなどを課題として対応しています。

BIMの環境整備も具体的な役割の一つで、trussのように建材が紙からデータで管理できるようになり、設計から施工まで業務全体が効率化できることを期待しています。

建築設計統括部設計企画部 鈴木・田村 当社は2022年5月に本社移転を予定しており、直近の設計企画部の役割の一つはテレワーク時代に呼応した設計業務の環境づくりです。建材の選定も課題の一つで、大量の建材カタログ類の保管場所は移転先に確保していますが、テレワークもあり、今後は原則撤廃してtrussを中心に建材選定を運用する方針です。

trussとメーカーカタログの違いは、さまざまな建材を比較でき、テレワーク時の建材検索の労力を飛躍的に少なくできる点です。建材の選定はプロポーザル・概算・実施設計前など各段階で、仕上イメージと積算のために必要です。trussを導入することで、テレワーク中の設計者でも求めるイメージや性能に沿った建材が短時間で選定できる環境を整え、業務効率化を図っていく予定です。


trussの第一印象と可能性

デジタル情報とモックアップ

鈴木 trussを初めて知った時、テレワーク時代に呼応した建材の選定手法につながると思いました。実際に建材を触って、光を当てなければ設計者と施主は決定できませんが、個人的に紙のカタログは徐々に無くなると思っています。今後はtrussのようなデジタル情報による候補の選定と、モックアップによる建材の施主確認・決定の流れが標準フローになると思います。また、個人設計事務所は都心のワンルームなど狭隘な事務所の中で、カタログ置き場が大きな割合を占めることが多く、カタログが電子化されれば彼らにもメリットが大きいと感じました。

杉山 例えば石材は斑(ふ)の入り方や色合いも産地によって異なるため、カタログの写真を見ても候補選定が非常に難しい。材料によっては現物を確認する必要があり、デジタルツールを使用しての建材選定の課題の一つだと思います。

鈴木 実際に施主のイメージに沿う石を選ぶため、わざわざマレーシアまで訪問して確認したこともあります。

田村 大判タイルを外壁に貼った場合も焼きムラがあって石と同様に難しい。施主の気に入った見え方を共有するために、東京から京都までビルを見に行ったこともあります。同じビルの外壁でも近距離と遠距離で見え方が異なるので、一緒に見て回って理想のタイルを施主と共有しました。


建材情報の組織内での展開・共有方法について

杉山 社内データベースに竣工図や竣工写真があります。用途などで類似物件を探すことができ、個人的にも参考にしていました。担当者時代はチームリーダーやグループ長とのコミュニケーションによる情報収集も気軽に行っていました。

鈴木・田村 組織内の情報伝達は、イントラでの情報掲載・物件担当者による説明会を行っています。進捗中の物件では設計各段階でデザインレビューを行います。意匠・構造・設備の設計者、現場担当者なども参加し、過去の組織的知見から計画と設計についてレビューを行います。例えば外部床での大理石使用は、防滑に配慮し原則不可としていますが、施主より強い要望があった場合は、加工や施工方法、不具合など幅広い見地で検討し、場合によっては材料費の他に加工費を加えるなど、総合的に方針が決定されます。

建材の知見(ノウハウ)とtrussについて

注意点や留意点が分かりやすい仕様を望む

鈴木 建材選定は、施工上の注意や物性の把握が重要です。建材選定後に、施工上の留意点を把握した場合、コストアップや建材の変更につながる可能性があります。例えばカタログに耐荷重と車両走行時の荷重が別に掲載されている場合や、留意点が製品とは別に最後のページに記載されている場合もありました。trussが早期の設計段階で正しく施工上の留意点が把握できる仕様なら、テレワーク中の若手設計者が、truss内で建材の留意点を確認して使用の可否が判断できて良いと思います。

田村 材料全般の留意点と、製品単位での留意点が分けて把握できると良いです。例えば床タイルは製品ごとに滑り係数があり、外部や内部、エントランスで使用する判断基準となります。

競争領域(自社のノウハウ)の取り扱い

杉山 建設業全体(協調領域)と各社(競争領域)のノウハウを分けて捉えることが重要で、協力会社含めた各社の生産性を上げるためには、協調領域の考え方が重要です。建材カタログの記載事項や既製品の情報は協調領域で、情報を如何に判断して各社が活用するかは競争領域となります。
trussが建設業界全体に向けての建材情報の発信(協調領域)とは別に、各社(競争領域)がノウハウを構築できるツールになれば、品質管理の観点からも使いやすくなります。注意点を含む建材情報・ノウハウ・基準が材料や製品に紐づけば、trussと現在の社内システムで連携して不具合や手戻りの予防措置が取れて利便性が高まるでしょう。

鈴木 施工上のルールや留意点は、従来は各現場所長の裁量の側面が強かったが、現在は本社で取りまとめてイントラで管理しています。trussの材料や製品と、共通のルールや留意点を関連付けて記載していくイメージになるのではないでしょうか。


trussの積算や調達での活用イメージ

グレード感の設定と積算への利用

田村 意匠設計者は、常に建築物のグレード感を重視しています。設計の各段階で、グレード感を基にした建材の選定には非常に苦労しており、trussによってグレード感とコストを標準化して把握できれば、意匠設計者としては非常に助かります。

鈴木 trussの建材検索のグラフ表示では、製品と価格の関係が一目でわかります。この機能に加えてグラフ上でグレード感を設定して把握ができれば、設計と積算にとって使い勝手が良くなります。イメージとしては、概算設計時に床タイルAのグレード感を「松竹梅」の「竹」と設定します。意匠設計と積算部門で、VEであれば「梅」の製品群から選定するとルール化できれば、VEやCDの時間が短縮されます。意匠設計は「竹で想定している」積算は「この価格格設定なら梅から選んでほしい」などtrussのグラフを見ながらコミュニケーションできると期待しています。

積算・調達のプラットフォームを目指して

杉山 積算業界はBIMオブジェクトの分類体系整備に、Uniclass(ユニクラス)※などのコードと建材の紐づけを検討しています。材料名と建材に設定されたコードが結びついて、truss含めた外部の建材データを扱うサービスに連携できれば、積算でも使いやすくなると思っています。BIMでの数量と属性が、trussの持つ製品データとマッチングすれば可能性が広がります。trussにメーカーがアクセスして材料価格を入力し、調達担当者が情報を確認してメーカーと交渉できるかもしれません。trussを介してゼネコンやメーカーが情報を共有することで、trussが調達のプラットフォームとして使えるとイメージしています。

鈴木 VEは短期間での対応が求められます。現状では意匠設計担当者がVE案を考えて積算担当者や調達担当者へ情報が伝わり、材工の単価がメールや打ち合わせで伝えられます。VE案と積算・調達価格をtruss上でフィードバックができて、各部門でやり取りできれば、VEの対応速度も上がります。

杉山 意匠設計段階の設定価格・積算時の価格・調達した単価それぞれを蓄積して、材料のグレード感や製品と繋がっていき、先ほどの自社のノウハウにできれば、各社にとって良いデータベースになりますね。


教育面でのtruss利用について

ワンクリックで建材を検索して教育を効率化

田村 教育面では、まずはじめに建材種類の把握が重要です。タイルにおいては磁器質タイルや陶器質タイルがあり、塗装もさまざまな種類と特徴があります。trussは各建材の種類が一覧で把握できて良いと思います。次にその材料がどこに使用できるかが重要で、部屋の特徴や、床・壁などに合わせた材料の把握が必要です。それから下地と仕上げの関係など施工の注意点の習得が必要だと思っています。

鈴木・田村 trussがクロスなどの各建材で基礎知識(種類・施工方法・使用部位・建築基準法の取り扱い)が把握できる仕様であれば、各社教育ツールとしても利用できると思います。現在、基礎知識の習得は現場を通して先輩から後輩への伝達や、特記仕様書による講習会などOJTが基本になっています。建設業の働き方も徐々に変化しており、教育についても効率化する必要があります。trussのように画像やグラフのプロットなど表示を切り替えていろいろ調べることができれば、設計・現場いずれの教育もサポート可能で、若手育成による成長が図れると思います。


今後について

鈴木 trussを各社向けにカスタマイズできる部分があればポイントが高くなります。ベーシックな部分がありつつ当社向けにノウハウを構築できれば、ゼネコン組織全体の運用としても使い勝手の良いものになります。

杉山 各社のクローズド情報はセキュリティの担保が必要です。公開情報と非公開情報をうまく切り分けできればtrussは使い勝手の良い建材のプラットフォームになれると期待しています。


※Uniclass2015は、複合用途や部屋用途、部位、工法、製品など主に7つの階層関係にあるテーブルから構成される分類体系である。複数のテーブルを使うことにより、建築生産で利用される用語の統一化やBIMモデル情報の抽出を可能とする。

※その他記載されている会社名、および商品名などは該当する各社の商標または登録商標です。


今回は様々な視点でtrussや建材についてのお話をお伺いしました。
trussは建材に関わる全ての方に役立つツールを目指しています!