ハウスメーカーはたくさんあるのにビルメーカーはなぜないのか。 kubota

建材を選択できるウェブサービスを作っていると疑問に思うことが時々出てきます。

 

多くの建材はビル用(建築用とも言われます)と住宅用に分かれていることが多く、大量に使用される前提の既製品は住宅用と言うカテゴリーの中だけに存在することが多いです。住宅用とはほぼ戸建住宅のことをさしており、日本で昔から主流だった戸建住宅で使われることを想定して作られた建材です。

戸建住宅は一クライアントのために作られる建物であるため、こだわって作っていくと金額が高くつきます。普通の人でもそれなりの金額でそこそこのレベルの戸建住宅を立てられるようにハウスメーカーと呼ばれる会社がたくさんできました。彼らは基本的な仕様を設計して、それを顧客ごとに若干カスタマイズする形で住宅を販売しています。今では日本国内の3割程度のシェアを持ち、日本の風景を作り上げてきました。誰もがハウスメーカーと言ったらその出来上がった建物をイメージすることができると思います。

 

それに比べてビルに関しては一品生産要素が未だに強く、クライアントの依頼があってからどういう建物を作りたいかヒヤリングし、プランやパースを作って提案するといったことが普通です。でもクライアントの中にはそこまでこだわらなくて良いからやり取りを少なくして安く作ってしまいたいという人もいるんじゃないでしょうか?

ある程度仕様を固めてしまったビルのパッケージを提案し、それで建てたいお客さんだけを相手にするというビジネスを行う会社が出てきても良いのになと思うのです。建設業の生産性が低い原因はその個別解を解いていくようなプロセスにあると思うのですが、もっと製造業的な原型となるプロトタイプがあり、それをカスタマイズしていく形も追求されてしかるべきだと感じます。その仕様を集中してみんなでより良いものにしていく努力をしたほうが、立てられる建物全体の平均的なレベルは上がっていくのではないかと思いました。もちろん土地毎の個別性は確実にあるので程度の問題はあるのですが。

三菱地所や三井不動産、住友不動産と言ったデベロッパーが自社で保有する物件については仕様をかなり決めてきている印象はあるので、そういう会社の中に同じようなことを考えている人たちがいるのかもしれません。ただ、彼らの物件は彼らの資産の範囲内だけのものです。外部の素人のオーナーもそういう選択肢が与えられても良いと思います。理想をいうと地域ごとだったり都市ごとにそれぞれの仕様の特徴があると面白いのかもしれません。

海外ではかなり大規模なものですが、建築するより製造するというような工事をものすごく簡単にするという視点からの試みがあるようです。建設に関わる人が足りなくなるということは見えている未来であるように思うのですが、対応策としては①効率よく建てる、②一つ一つの建物が使われる寿命を長くし建てられる建物の数を減らす、しかないように思うので、切り口としては面白いと思うのですが。