建設業界の経営の大変さは仕事を取り続けなければならないこと kubota

新しいものやサービスを作ることもとても大変ですが、それを売ることもとても大変です。作って売るところまでいかないとお金は入ってこず、会社も中で働いている人も苦しくなってきます。

 

建築の世界は継続的に同じクライアントから同じような仕事が舞い込んでくる世界ではないです。一度建物が立てられれば何十年も使われるし、金額が大きいため、いくつもの建物を継続して建てるだけの資金力を持ったプレイヤーはごくわずかです。そのため、常に自社のマンパワーリソースのバランスを考えながら新規の仕事を取ってこなければなりません。建物を作るのは相当様々なことを総合的にこなせないといけないですが、それをこなしながら営業活動をしなければなりません。

 

キャッシュフローはプロジェクト単位なので、それなりの数の案件を複数同時に進められるだけの組織規模にならないと営業専門の人間をおくことはなかなかできないので、小さい会社だと業務の合間に社長がお客さんや、仕事を融通してくれそうな仲間とあっておく必要があります。お客さんからコンスタントに問い合わせがくるレベルまで到達すれば良いけれど、そこまでいくのがかなり大変だなという印象を持っています。ベンチャーの世界も同じようなものですが、資金調達の手段が複数あるため、まだこの苦しさは少ないのかと。

 

特に設計事務所はいただける金額が少ないので苦しそうだなと思うことが多いです。大学の先生を兼ねながらうまくやっている人たちはいますが、専業でやられていて組織を大きくしていけるくらいの営業力というか社会性というかを持っている人は稀有だと思います。隈研吾建築都市設計事務所隈研吾さんやプランテック大江匡さんあたりは別格ですね。100人を超えるレベルの組織を設計事務所から始めて作るのは並大抵のことではないです。この業界のプレイヤーとして独立して会社経営をしていこうとする人は、そこを乗り越えられるように独立前に入念に準備をしておく必要があるように思います。

 

まずは積極的に情報発信をして、自分のことを認知してもらうこと。その中で自分はどういうことに興味があり、どういうことをこれまでやってきたのか、どのようなことができるのかをまとめたウェブサイトだったり、facebookページだったりが必須だと思います。そこで定期的にアウトプットをしていく。発注する金額も大きい世界なので実際に会ってからでないと仕事は発注することはなかなかないと思うので、いろいろな方が出入りする場にできるだけ出入りしておくことも必要でしょう。なぜか建築関係の人は建築関係者だけで集まりがちですが、クライアントは業界外の人であることがほとんどなので意識的に建築以外のことにも興味を持ってネットワークを構築していく必要があると思います。

 

立ち上がりがうまくいってもそれを継続していくことがまた大変です。営業を楽にするにはいくつかのパターンがあると思っています。

 

一つ目が、特化すること。

設計事務所でいうと、病院建築に強みを持っている伊藤喜三郎事務所や旅館ホテルの設計に特化している石井建築事務所、銭湯の設計に特化している今井健太郎建築設計事務所、今飛ぶ鳥を落とす勢いのエコハウスを売りにされている松尾設計室など、そのキーワードで検索するとトップに出てくるような事務所が多数あります。このように特化するのはかなりコンスタントに仕事を取りやすいし、ブランディングが比較的容易だと思います。設計者だと建築業界紙で取り上げられるようなポジションを皆目指すのだと思いますが、それは建築大好きなクライアントという相当数少ないパイを取り合う行為で、経営視点で見るとレッドオーシャンのように思います。自分の得意なテリトリーを作り、その基盤を元にステップアップしていくのがほとんどの設計者にとって王道のように思います。

 

二つ目が地域密着。

仕事の場所をある程度最初に決め打つことでそのエリアで人脈を作り仕事をとってくる方法です。最近自分が住んでいるエリアのコミュニティにどっぷり入り始めて改めて感じるのですが、地場の人のネットワークは侮れないところがあると思っており、そこで一度信頼されると継続的に仕事の相談がくるように思います。品川区の建設組合に入っているのですが、そのような形でビジネスを展開されている方が多いですし、とても安定しているように思います。「地域密着」、「設計事務所」で検索してみましたが、スズキ建築設計事務所というところがヒットしました。その地域で逃げないで仕事をこなします、というのは信頼感がありますし、その評判も近くで仕事を頼んだ人に聞いてみると分かります。丁寧な仕事を積み重ねていけば仕事が仕事を呼んでくれる状況になるのではないかと思います。「地盤とする場所の名前+設計」で検索された時に検索結果でトップに出てくるのを目指すとともに、地元のお祭りなんかに積極的に参加して地域に溶け込んでいけば良いのだと思います。

 

いずれにせよ会社を大きくされている人たちは懐に入るのが上手い方が多く、人に好かれる方が多いので、一緒にいるだけで勉強になります。そういうことも独立した後に必要になるとわかっていると将来が楽になるかなと思います。自分ですべてやれる必要はなく、会社内で能力を補完し合えるメンバーを集めるという方法も当然あり得ると思います。